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目次

Ableton Live 12.1ベータ版の新機能を徹底解説

Author: sleepfreaks

進化したAbleton Live 12.1
Auto ShiftやDrum Samplerなどが登場!

今年3月に大型アップデートで話題を呼んだAbleton Live 12ですが、早くも12.1が発表されました。
新たな機能の追加で音楽制作の可能性がさらに広がり、従来のデバイスも強化・改善されています。
どのように進化したのか、新機能を中心に詳しく解説していきます。

高度なピッチ補正とハーモニー作成:Auto Shift

ピッチ変更が可能なデバイスはこれまでもありましたが、Liveで初めてスケールに沿ったピッチ補正が行える「Auto Shift」が登場しました。

ピッチ補正

まずは、ピッチ補正の精度を確認していただくために、補正前と補正後のサンプル音源をお聴きください。

補正前は、少しボーカルのピッチが不安定でしたが、Auto Shiftを適用すると、しっかりと補正されています。

ここからは、補正の手順を解説していきます。

お聴きいただいたサンプル音源はGメジャーで構成されています。
そのため、「Root」で「G」を、「Scale」で「Major」を選択し、キー設定を行います。

「Strength」機能は、入力音とターゲットピッチ(正しいと判断された音程)の間でどれだけ補正を行うかを決定します。
値を高くする程に、より強力なピッチ補正が行われます。

「Smooth」機能は、ピッチ補正の強さや速さを微調整し、自然さと正確さのバランスを取ります。
値を低くする程に、ピッチ補正が瞬時に行われ正確なピッチに素早く到達しますが、入力する音声によっては、機械的な印象を与える可能性があります。

今回は、より正確なピッチ補正を行うために、Strengthは100%、Smoothは30%に設定しています。

ハーモニー作成

Auto Shiftの特徴として、和音の入力に対応しており、メインボーカルから多声のハーモニーパートを手早く作ることが可能です。

「Shift」は、設定したスケール上でピッチを上下に変更する機能です。
今回は、Shiftを「−2」に設定し、ハーモニーを作成しました。

使用しているサンプル音源はGメジャーで構成されていますので、3度下のハーモニーが作成されています。

MIDI情報からのハーモニー作成

さらに、Auto Shiftは、外部からMIDIノートを受信し、その演奏内容に基づいてピッチを強制的に合わせることもできます。
実際に、MIDI情報からハーモニーを作成する例を紹介します。

上記の画像は、使用するメロディーのオーディオ波形と、あらかじめ用意したハーモニーのMIDI情報です。

「MIDI On」を点灯し、MIDIノートの「トラック名(今回はCho)」を選択します。
「Mono/Poly」は、単音処理と和音処理を切り替える機能です。
用意したMIDI情報は、単音のハーモニーで作成しているので「Mono」を選択します。

「Glide」機能は、ある音程から次の音程に完全に移行するまでにかかる時間を調整します。
ポルタメント効果やギターのスライド奏法、シンセサイザーのグライド効果の模倣などに利用できます。
これらの効果は、MIDIノートを重ねて入力した箇所で得ることができます。
今回、「Glide」は使用していません。

下記が、使用したメロディーのサンプル音源と、MIDIで作成したハーモニー情報をAuto Shiftに送信し、メロディーに加えた音源です。

使用したメロディーのみのサンプル

MIDIから作成したハーモニーを加えたサンプル

MIDI情報がボーカル音声に変換され、メロディーラインに対してしっかりとハーモニーが作成されています。
このように、MIDI情報をAuto Shiftに送信することで、複雑なメロディーに対しても効率よくハーモニーを付けることが可能です。

2声以上のハーモニー作成

また、2声以上のハーモニーを作成する場合は、キー設定とトラック選択を行った後に、「Poly」を選択します。
次に、「Voices」で声部数を指定します。
声部数を指定することで、設定した数の声部まで入力された音を個別に検出し、それぞれにピッチ補正が適用されます。
なお、「Poly」を選択した場合は、「Glide」機能が使用できません。

その他の機能

その他の機能についても、簡単に解説します。

  • 1.Live Mode:リアルタイムでのピッチ補正を行う機能です。
    低レーテンシー設計でライブパフォーマンスや録音中のモニタリングなど、即時のフィードバックが必要な場面で特に有効です。
  • 2.Pich:入力された音声や楽器音のピッチを上下に変更できます。
    Fineの設定で、セミトーン(半音)よりも細かい単位でピッチを調整できます。
  • 3.Formant:声質や音色を変化させることができます。
    F. Follow(Formant Follow)の数値を上げる程にフォルマントがピッチ変更に完全に追従し、自然な声の高低変化をシミュレートします。
  • 4.Vibrato:ピッチに周期的な変動を加え、音に揺らぎや表情をつけます。
    Fade-inでビブラートの強さが増していく時間、Amountでビブラート効果の強さを調整します。
  • 5.High/Mid/Bass:入力音声を高域(High)、中域(Mid)、低域(Bass)の3つの周波数帯域に分割し、それぞれの帯域に対してピッチシフトの効果をどの程度適用するかを制御します。
Auto Shiftに搭載されたLFO

Auto Shiftは、一般的なピッチ補正ツールには珍しくLFOを搭載しており、よりクリエイティブな音声加工を行うこともできます。
主なパラメータについては、下記の通りです。

  • Shape:LFOの波形を選択します。
  • Rate:LFOの速度の調整と、プロジェクトのテンポに同期させるかどうかを選択します。
  • Mod Routing:LFOが生成する波形の値を、パラメータ(Pich・Formant・Volume・Pan)に適用し、効果を生み出します。

このように、Auto Shiftは、基本的なピッチ補正から高度なサウンドデザインまで対応できる機能を備えています。
ポップスから斬新な電子音楽まで、幅広いジャンルでの活用が期待できそうです。
Auto Shiftは、すべてのLiveエディションで利用可能です。

柔軟なドラムサウンドデザイン:Drum Sampler

ドラムラック専用の新しいインストゥルメントとして、ドラムサンプラーが登場しました。
このサンプラーは、サンプルの時間軸操作(開始点・長さ調整、タイムストレッチ、ループ機能)と音色調整(AHDエンベロープ、ピッチ操作、フィルタリング)を包括的に行える多彩な機能を備えています。

さらに、FXセクションでは様々な特徴的なサウンドに加工することができ、XY座標上での音色コントロールにより直感的な操作が可能です。
これにより、キックドラムの低域強調からスネアドラムの繊細な音色調整まで、詳細なサウンドデザインが実現します。
Drum Samplerも、すべてのLiveエディションで利用可能です。

ユーザーコンテンツの自動タグ付け

AIを活用した音声分析技術により、60秒以内のサンプルに自動的にタグを付ける機能が追加されました。

ブラウザ内に新たに設けられた「Auto tags」は、サンプルの音響的特徴を分析し、最も適切と思われるサウンドカテゴリーのタグを自動で割り当てます。
この機能は表示のオン/オフが可能で、さらに「Edit」オプションを使用してタグの編集や削除が行えるため、柔軟性に優れています。
サンプル管理の効率化や検索性の向上に期待できる機能です。

オートメーションとモジュレーションの新機能

アレンジメントビューとクリップビューのエンベロープ表示モードで、オートメーションとモジュレーションをキーボードでコントロールできる機能が追加されました。

Enterキーでブレークポイントの作成・選択、上/下矢印キーでブレークポイントの値、左/右矢印キーでブレークポイントの時間を変更できます。
また、Tabキーでブレークポイントを右へ移動し、Shift+Tabキーで左へ移動することが可能です。

MIDI編集と表現力の向上

新しい「ノートの検索と選択」オプションにより、MIDIノートを検索・選択できるようになり、複雑な編集作業が効率化されました。

クリップビューの設定にある虫眼鏡ボタンを有効にすると、各フィルターを使用してノートの検索および選択ができます。

  • Pich・Time(ピッチと時間):特定の音階やタイミングのノートを選択
  • Velocity・Chance・Duration(ベロシティ、確率、長さ):ノートの強さや特性で選択
  • Condition(状態):MIDIノートの特定の状態や特徴に基づいて選択
  • Count(カウント):n番目ごとのノートやコードを選択(3番目とした場合、2つおきにノートを選択)
  • Scale(スケール):特定の音階に属するノートを選択

例えば、「Pitch」を選択した場合、Pitchの右隣に音名系列が表示されます。
「F♯」を選択すると、画像のように「F♯」のみが選択されます。

「Time」を選択した場合は、指定したタイミングでのノートが選択されます。
タイミングは、「Start・Length・Repeat」で設定します。

これらのフィルターは組み合わせて使用することが可能で、より高度なノート選択を実現できます。

チョップMIDIツール

「チョップMIDIツール」の追加により、MIDIノートの分割や再構成がより簡単になりました。

まず、MIDI変形ツールで「Chop」を選択します。
分割したいノートを選択します。

「Parts」では、ノートの分割回数を指定することができます。
最大64個までの分割が可能です。

「Gaps」では、分割されたMIDIノート間に挿入する空白の時間を指定します。
マイナス値に近づけるほど、空白が多くなります。

これらの機能により、スタッカート効果を生み出したり、複雑なリズムパターンを効率よく作成できるため、音楽制作の柔軟性と創造性の向上が期待できます。

MPE MIDI ツール

さらに、MPE(MIDI Polyphonic Expression)パラメータのカーブを作成できる新ツールが追加され、グリッサンドとLFOの2種類のツールにより、表現豊かなMIDI演奏が可能になりました。

MPE MIDI ツールを使用する際は、クリップビューでMPE表示モードに切り替えます。

グリッサンド(MPE)

MIDI変形ツールで「Glissando MPE」を選択します。
グリッサンドで繋ぐノート(音程が違うノート)をどちらも選択します。
2つ以上のノートを選択し、同時にグリッサンドを適用することも可能です。
「Curve」でグリッサンドの形状を決めて、「Start」でグリッサンドの開始位置を調整します。

LFO(MPE)

MIDI変形ツールで「LFO MPE」を選択します。
適用するノートを選択し、波形の上にある「MPE」から変調したいパラメータ(ピッチベンド、プレッシャー、スライド)を選択します。
波形の下にある「Shape・Rate・Amount」でLFOの波形、レート、深さを設定します。
波形の右横にある「Eve」でAttack(立ち上がり)とDecay(減衰)を調整して、LFOの全体的な強さを変化させます。

改良されたLimiterとSaturator

Live 12.1では、音声処理の核となるエフェクト、リミッターとサチュレーターが大幅に強化されました。

リミッターは、新たにMid/Sideルーティングの追加とゲインリダクションリンクの改善により、ステレオイメージを維持しながら精密な音圧調整が可能になりました。
さらに、ソフトクリップとトゥルーピークモードも追加され、より音楽的で配信に適した音質を実現しています。
新たなMaximize機能は、単一のしきい値でダイナミックレンジと音量を最適化し、プロフェッショナルな音圧感を簡単に得ることができます。

一方、サチュレーターは、より直感的で強力なツールとなりました。
メインビューは重要パラメータに焦点を当て、リアルタイムの視覚化で信号レベルが曲線上に表示されます。

新たなBass Enhancerカーブは808キックドラムやシンセベースラインなどのローエンド信号の処理に最適です。
専用のThresholdパラメーターにより、特定のレベル以上の信号だけに歪みをかけられ、緩やかな歪みから急激な歪みまで、なめらかに調整できます。
Amt Loパラメータでは、低音域のサチュレーションをさらに制御し、ベース音の強調や温かみを加えることが可能です。

また、第2ステージにクリッピングモードが追加され、ソフトに加えて、ハードクリッピングステージを選択できるようになりました。
拡張ビューではプリシェイパーEQカーブが表示され、より細かい音色調整ができます。
特に電子音楽やヒップホップなど、低音が重要な役割を果たすジャンルに特化したアップデートと言えそうです。


いかがだったでしょうか。
興味深い新機能に加えて、音楽制作に直結するユーザーフレンドリーな操作性の向上は非常に魅力的です。
正式リリースが待ち遠しいですね!

なお、Live 12ユーザーの方は、ベータプログラムに参加することで、無料アップデートを試すことができます。
ご興味のある方は、Liveベータ版テストポータルにアクセスして、ぜひ参加してみてください。