「エレクトロな歌モノPOPS」3つの垢抜けポイントを添削
皆様が制作した様々なジャンルの楽曲を添削!
当カテゴリーでは「視聴者の皆様が制作した楽曲を添削する」ソングカウンセリングをシリーズでお届けしていきます。
「皆はどんな曲を作っているの?」「クオリティは?」「何に悩んでいる?」など。
色々なことが気になります。
ここではユーザーさんの楽曲を紹介しつつ、曲がより魅力的になるポイントをお伝えします。
添削を通してきっと様々な面で発見があるはず!
各添削項目を皆様のスキルアップに繋げていただければ幸いです。
♯1 エレクトロな歌モノPOPSを添削
添削楽曲の紹介
爽やかで軽快な印象のエレクトロポップの制作者はボーカロイドプロデューサーとして活動され、大阪音楽大学に通う音大生の「フラウト」さんです。
YouTube : https://www.youtube.com/@flauto0121
ニコニコ : https://www.nicovideo.jp/user/84652520
X : https://x.com/flauto0121
- 楽曲のイメージ
「重音テト」というキャラクターが歩んできた歴史やキャラクター性を最大限活かした重音テトの為の楽曲です。
キャラクター誕生の経緯や有名な楽曲とも絡めたストーリーになっています。 - こだわりのポイント
まず重音テトに絡めた歌詞とタイトル。音としてはサビのキャッチーさとコード進行。
特にサビ頭の「IVM7→IV/V→IIIm7→VIm7」や後半の「IVM7→IV/V→III7→♯Vdim→VIm→IVM7→IVm→I」がこだわりポイントです。 - 悩んでいる点
ミックスをする上での各楽器の配置。特にストリングスをどこに配置するとバランスが良いのか迷いました。
楽曲添削ポイントの解説
それでは3つの添削ポイントを確認していきましょう。
1.セクションごとの変化をつける
ポップスの場合、サビに入った瞬間の気持ち良さが求められる場合が多いです。
この盛り上がりをコントロールする上で大切なことは
- サビ自体の盛り上がること
- サビ前で盛り上げ過ぎ無いこと
この2つが重要で、特に後者は日頃のレッスンの中でも見過ごされる場合が多いです。
盛り上がりをコントロールする上で大切な要素は何でしょうか?
私は下記5つの要素を指針としています。
- メロディ
- コード
- リズム(ビートやバッキングパターン)
- 帯域分布と密度
- 定位の分布
これらを要素別に確認することで、素早く的確に修正点を見つけられます。
ここではサビ直前のCメロに対して、添削を加えていきたいと思います。
「添削前」
「添削後」
前半のドラムパターンにハーフビートを採用し、後半は4つ打ちに戻すことでサビに向けての上昇感を演出しました。
併せてベースフレーズもロングトーンを使用したラインでメリハリをつけ、後半も他セクションではない16分裏にアクセントを持つラインにしてあります。
Cメロとサビで全く異なるノリを作ることができるので、楽曲にはっきりとした起伏を生むことができます。
2.ダンスミュージックらしい、リズムトラックを意識する
4つ打ちのダンスビートが主体となっている楽曲では、ノリがよく体が動いてしまうような躍動感あるサウンドに仕上げることを意識すると良い結果となります。
当楽曲はキックトラックの主張が少ないと感じました。
よりアタック感が強く、分離した印象のキックサウンドに仕上げてみます。
アタック感を強調した場合、下記の方法が定番かつ効果的です。
- キックのサンプル自体を差し替える
- ダイナミクス系のエフェクトを使用する
ここではエフェクト処理を行ってキックを目立たせていきます。
「添削前」
「添削後」
トランジェントシェイパーを使用すると、アタック/リリースを個別に調整することができます。
アタックを強めるだけでなく、リリースで余韻を抑えることで、キレが良いキックを作ることができます。
コンプレッサーは、アタックタイムを残すことを意識して適用しました。
立ち上がりを強調できるため、「締まりのあるサウンド」を実現できます。
そして、定位を少しセンターに寄せ、サイドに広がるベースから分離させることを意識しました。
よりキックが際立つはずです。
3.帯域ごとに配置する楽器を決める
ストリングス、ギター、ピアノなど、各トラックがしっかりとアレンジされているにも関わらず、ラインを感じ取れないのはもったいないと感じました。
全体的にサウンドが中音域に密集していることが原因です。
「添削前」
「添削後」
楽曲の高域を聴いてみると、ピアノやギター、ストリングスなどの音は聴こえず、ハイハットが単独でカバーしてる印象です。
そのため、ストリングとピアノをより高音域中心の成分で聞こえるようにEQで調整しました。
楽曲全体で聴いても、大きく印象が変わりました。
いかがでしたでしょうか?
3つのポイントを適用したサウンドが下記です。
帯域のバランスが整って非常に聴きやすくなりました。
また、楽曲を通しての抑揚もしっかりついており、引き込まれますね。
このように少しの工夫でより魅力的な楽曲になることがお分かりいただけると思います!
次回はオーケストラサウンドを取り入れた楽曲添削を行います。
記事の担当 宮川 智希/Tomoki Miyakawa
15歳でシンセサイザーの魅力に惹かれDTMを始める。
20歳よりサポートキーボーディストとして大久保伸隆氏(Something Else)を始め多くのステージで活動する傍ら、活動拠点を制作へとシフトする。
その後、音楽制作ユニットL75-3を結成し、同人、商業両面で音楽作家として活動を開始。
2013年より声優原由実氏への楽曲提供を皮切りに、永井朋弥氏(+Plus)楽曲で編曲、映画での劇伴制作、イベント内でのBGM制作と様々な制作の現場に携わる。
同人活動ではVocaloidを用いた楽曲を使用し、“Twilight of Small Planet”がニコニコ動画カテゴリーランキング5位を記録。
その他、docomo Xperia feat. HATSUNE MIKU内オフシャルコンテンツや東京IT新聞などのメディアに掲載される。
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