「音楽業界への道標」第17回 bambooさんインタビュー

Author: sleepfreaks

milktub bambooさんへインタビュー

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音楽業界への道標、第17回目となる今回はmilktubでおなじみbambooさんにお話を伺って参りました。ゲームやクラウドファンディング、アパレル等々幅広い活動で知られるbambooさんですが、その原動力となっているのは一体何なのか。とても豪快でロックなお話を沢山お伺いすることが出来ました!必読です。

ーーお忙しい中取材させていただきありがとうございます。bambooさんは現在milktubというバンドのボーカリストとして活動しつつ、数多くのプロジェクトに携わっていらっしゃいますが、現在はどのようなことをしていらっしゃるのでしょうか?

OVERDRIVEっていうブランドでバンドをモチーフにしたゲーム開発、あとはSTUDIO696でのレコーディングスタジオ運営やマーチャンダイズ・制作を主に行っています。
またMangaGamerっていう日本の美少女ゲームを海外用に翻訳して移植、販売する会社もやっています。こちらは10年前に始めたんですけど、今は15万人まで会員を増やすことができて売り上げも3億円くらい出ている状態です。

あとはCAMPFIREというクラウドファンディングの顧問も2年くらい前からやっています。

ーーここまで沢山携わっているのには、一体どのような理由があるのでしょうか?

全ては音楽がやりたいから。バンドを続けたい、そのために色々やっていたらこうなったっていう感じですね。

僕の中で優先順位のトップはmilktubなんです。今年45歳になりますけど、若い頃は「バンドでデビューして事務所に入りレコード会社に付いてもらって…」みたいなことを夢見てたんですけど、それが叶わなかった。そこで「じゃあ自分でタイアップ先を作ろう」と思ったんです。
例えば年間100本ライブをするより、自分のゲームの主題歌を自分で作った方が聴いてくれる人の分母が多いなと。そんな思いもあり、2000年前後くらいの頃美少女ゲームの業界に入りました。ゲームのイベントをライブハウスで、しかもバンドを使ってやるっていうのは当時としては僕が初めてだったと思いますね。

milktubの存在

ーーbambooさんは元々どんなきっかけで音楽を始めたのでしょうか?

モテたかった、それが理由です。未だにモテたことはあんまりないので、来世でA9(Alice Nine)とかGRANRODEOみたいになって頑張ろうと思います。(笑)

まあそんな理由で、幼馴染で一つ下の一番星☆光と何人かでバンドをやろうってことで結成したのがmilktubのスタートです。
結成当時はドラマーで、大学生の頃初期の黒夢でサポートドラムをしていた松山さんと出会いお師匠さんとして色々教えてもらったり、コンサートの制作や警備のバイトをしたりもしていました。

ーーその頃からバンド活動と並行してイベントのお仕事等もされていたんですね。

そうですね。ライブハウスって借りるのそこそこ高いからみんなで協力して貸切イベントをやったり、コンサートのオーガナイザーみたいな仕事をしたり。その時の経験は今も活きていると思います。

そうして活動を続けながら、22歳くらいの頃BAMBOO RECORDっていうレーベルを作ったんですよ。

ーーえええ!22歳で、ですか。

めっちゃバイトをしてお師匠さんに給料を払ったり、僕のプロデュースで先輩のバンドのアルバムを作ってCDをリリースしたり。
でも当時は売り方なんて全然分からなくて、流通や問屋さんの存在をその時に初めて知りました。結局楽器店に置かせてもらうことになったんですけど、「こんなに(マージンを)引かれるんだ!?」って驚いた記憶があります。
ビニール手袋しての組み立てからシュリンクまで全部自分たちで作ったCDをハイエースに積んで、日本全国北から南まで回って4000枚くらい売りました。

ーー何千枚も手作業で組み立てるのもそれを売るのも、途方もない労力がかかりそうです…。

しかもそのCDを作るにあたって貯金や銀行から借りた資金300万円を、大馬鹿だから全部レコーディング費用に使っちゃったんですよ。(笑)
当時まだ今みたいにPro Toolsみたいなのが無かったからDAT(テープ)で録って。1ヶ月近くスタジオを借りてCDを作りました。僕の音楽の原体験はそこにあります。

CDは1年くらいかけて全部売ることが出来たんですけど、そこで「物を売る大事さ」っていうのをすごく学びましたね。

ーー「作る」と「売る」の両方を経験していったんですね。

ただそれでもやっぱり、今でもバンド活動は大変ですよ。実際milktubだって4、5年くらい前まではライブやるたびに赤字でしたし。じゃあその赤字を埋めるためにどうしたらいいかっていうことで、売り方も含めて物販をすごくこだわるようになったんですよ。そしたらそれが結構評判良くて。

そもそもゲームの世界に入ったのも、要は「ゲームメーカーのお金で音楽を作るならワシら持ち出しないやんけ!」みたいなすごい単純な理由だったんですよ。(笑)
美少女ゲーム業界って割と少ない人数でやってるから、ディレクターやプロデューサーって結構すぐなれるんです。でもそこには責任や、やらなきゃいけないことがたくさんあって。そこでめちゃめちゃ磨かれましたね。予算管理からプロモーション、とにかく売らないといけない。そこでクラウドファンディングだったり海外のビジネスだったりと発展していくわけです。
結局は「milktubをやりたい、続けたい」っていうところに繋がっているんですよ。

ーー様々なものが全てmilktubの集約されているんですね。

アニメ系のグループやユニットなんかは、「役者」っていう立ち返る場所がある。でも僕らは音楽しかなくて、それを続けるための戦い方やアイディアを模索していった結果こうなりました。若い頃はレコード会社にお世話になったりデカいところでライブをするっていうのは叶わなかったんですけど、今は叶いましたね。なんてったって、エロゲーの会社の社長がアニサマ出てさいたまスーパーアリーナで歌ってるんですから。

続けることの大切さ

ーーbambooさんをここまで突き動かしている原動力は何なのでしょうか?

武道館でライブがしたいんですよ。
僕ら世代のバンドマンにとってやっぱり武道館って特別なところで。ランティスでアニメ音楽をやらせてもらって色々大きなところで歌わせてもらったりしてるんですけど、やっぱり自分たちで武道館をやりたいなと思って。
他のことは大概叶ったんですが、やっぱり武道館という特別な場所で演って終わりたいなと思っていますし、そのためにゲームを頑張ったりなんだりしています。

ーーbambooさんのお話を聞いていると、改めて続けることの大切さを感じます。

だってムカつくじゃないですか。自分が昔思ったことができないっていうのは自分に負けた気がして嫌なんですよ。
僕の周りで解散もしないでずっとやってるバンドって、ニューロティカとかA9、流田Projectとかなんですけど、そういう人たちにすごくリスペクトを持っていますし、何かあったら手伝ってあげたいなと思っています。

ーー長く続けていく中で、焦りなどもあるかと思います。

30歳になる前くらいだったと思うんですけど。ニューロティカ23周年のワンマンライブを観に行った時に、ボーカルのあっちゃんが「俺たちの23年間は間違いじゃなかった」って言ってるのを見てすごく泣いちゃって。俺もそういう風に言えるかな…いや、まだそこまで頑張ってないなと思って。その足でランティスに行って、「milktub名義でアルバムを作りたい。売るためならなんでもする。」って言ったんです。
そしたら当時プロデューサーの斎藤滋(さいとうしげる)が「頑張りましょう!」って言ってくれて。
僕らのメジャーデビューって2枚組ベストアルバムから始まったんですけど、それが運よく売れて「じゃあアーティストとしてやりましょう」って言っていただいて今に至るんです。だからランティスとも結構古い付き合いなんですよ。

ーーそうだったんですね。ちなみに、今までで一番苦しかった時期はありますか?

常に苦しいですよ。お金は無いよね。(笑)
「ひと月以内に1000万円集めなさい」みたいなミッションも結構あったので。でもやりたいことをやっていますからそれもしょうがないと思っていますし、そんな爆裂儲かることでもないなと。
ただうちのお客さんは僕の作ったものに刺さってくれる人がいて、その人たちが支えてくれるから今があって。だからファンにはすごく感謝してますし、嘘をつきたくないって思いは常にあります。

有頂天家族2 OP 「成るがまま騒ぐまま」

milktub流作曲術

ーーbambooさんは普段どのようにして作曲していらっしゃるのでしょうか?

僕担当で作曲することは少ないですよ。 作曲は相方の一番星がやってますね。ギター覚えたのも40歳過ぎくらいで、バンドの連中にも「10年前に覚えておきなよ!」って怒られちゃいました。(笑)

有頂天家族の時でいうと、木曜日にランティスに呼び出されて「月曜日までに仮歌込みで2曲デモを作ってほしい」と。bambooさんだったら出来るでしょ?って言われて頭にきて、一番星と作家の宮崎京一でスタジオに篭って3曲作りました。そのうちの1曲が「有頂天人生」です。

原作がある作品の場合は、僕らが作品を代弁しなくちゃいけない。主題歌ですからね。
原作を読み込んで、付箋をつけていきながら「ここが言いたいところなんじゃないか」「これを伝えたいんじゃないか」というポイントをピックアップしていきます。
それで出てきたのが「おもしろくない世の中 おもしろくすればいいさ」というフレーズなんです。

*有頂天家族OP 「有頂天人生」の歌詞はこちら

ーー「有頂天人生」はmilktub名義では初のアニメ主題歌となった楽曲ですよね。

僕は専業歌手でもなければ声優でもない、エロゲも作っているよく分からないヤツにランティスもよくタイアップをくれたなと。(笑)
でもこの10年間で何億円も溶かして自分でタイアップ先を作り、制作したゲームもアニメ化しましたっていうプライドはありました。

自分でタイアップ先を作ってそこに曲をずっと作り続けてきましたから、作品に対して曲を作るっていうノウハウは他の人以上にあると思います。

ゲーム制作とクラウドファンディング

ーーbambooさんはミュージシャンとしての活動と並ぶくらい、ゲーム制作にもとても力を入れていらっしゃいますよね。僕も以前「キラ☆キラ」や「DEARDROPS」をプレイしたことがあるのですが、心にグサグサ刺さってとても感動したことを覚えています。

僕はバンドやバンドマンに対して強烈な憧れを持っていて、そのバンドとゲームを合せてみようと思って作ったのが「キラ☆キラ」ですね。

ーー「バンドマンあるある」やリアルな葛藤、悩みなどが盛り込まれておりかなり話題になった作品ですよね。

「キラ☆キラ」と「DEARDROPS」に関しては昨年CAMPFIREでクラウドファンディングを実施し、全年齢版としてAndroid・iOSへ移植することができました。

「キラ☆キラ」 Android版 / iOS版
「DEARDROPS」Android版 / iOS版

ーーもともとbambooさんがクラウドファンディングを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

エロゲの資金調達って大体流通からだったりするんですが、パッケージがどんどん売れなくなって徐々に出資金額が下がっているんです。あとは違法アップロード・ダウンロードみたいな問題もあるし、業界の”どうしようもないコト”のツケもある。
じゃあどうしよう、っていうときに「自分たちが作ってるものを、自分たちで直接エンドユーザーに届けるっていうのがいいんじゃないかな」と思ったのがきっかけです。

ーー現在はCAMPFIREで顧問も務めているbambooさんですが、どのようにプロジェクトの成功方法を研究したのでしょうか?

自分でプロジェクトを立ち上げる前に、まずはたくさんのプロジェクトを支援しました。そこでどういうやり取りをしているのか等々、すごく研究しましたね。
あとは現在も色んなプロジェクトのキュレーターをしながら情報収集は続けています。勿論キュレーターになる時はちゃんと僕の名前も出して、信用を賭けて一蓮托生で必死にやっています。

ーーCAMPFIREでは本当に様々なプロジェクトを手掛けていらっしゃいますよね。

そうですね。僕、日本のミュージシャンの中で一番クラウドファンディングを使ってる自信があります。
自分のとこのライブDVDだったり、緒方恵美さんやクラムボンのプロジェクトだったり様々なんですが、クラウドファンディングを使って集めた総額は今のところ3億5000万円くらいです。いわゆる売れているバンドもそうだし、売れていないアーティストも含めて「クラウドファンディングの正しい使い方・カッコよく見える使い方」っていうのを普及させるべく動いています。

ーーやはりクラウドファンディングって失敗が怖いというか、良くも悪くも数字が見えてしまうことに不安を感じる人が多いと思います。

それは不勉強なだけなんですよ。本来ならもっと研究してやんなくちゃいけないのに、「ページを作って募集を開始した」っていうことが目的になっちゃって、そこで終わっているんです。
あとはもう一つの要因として、クラウドファンディングをエンターテイメントにしていないっていうのもあります。”楽しくお金を使ってもらう”ためのムードだったりロマンだったりいろんな要素があるんですけど、それをちゃんとやっていないからただのお金集めになっちゃって、見え方もカッコ悪くなっちゃう。
この辺りは細かく訊きたかったらCAMPFIREまでご相談ください。

これから音楽業界を目指す方へ向けて

ーーbambooさんは沢山のことを手掛けていらっしゃいますが、時として失敗することもやっぱりあるんでしょうか?

沢山ありますよ。95%は失敗していると思います。

ーー95%ですか!?とてもそんな風には見えません…。

うまくいっているように見せるのも商売なんですよ。(笑)
何かをするためにお金を集めるというのは、別に利益が出ているわけじゃないんです。
だから見え方・見せ方がとても大事です。だって僕らはフロントマンであり、エンターテイメントの人間ですから。

ーー挫折しそうになることもあるかと思います。

もちろんあります、でも即切り替えます。現世はもう無理だから来世でワンチャン、みたいな。

ーーやっぱり来世なんですね。(笑)

失敗を引きずることもありますけど、引きずってもしょうがないですから。 何人女を口説いて失敗したってしょうがないんだから縁がなかったっていうことだよ、みたいな 。

それでもやめないし、諦めませんけどね。

ーーこれから音楽業界を目指す方に向け、何かアドバイスがあれば教えてください。

地方の子なんかは「数字で見える価値」をある程度つけてから東京に来た方がいいと思います。
今の時代はどこに住んでいても自分に対しての価値を作ることや、地方から挑戦する道筋があります。いきなり東京に出てきても仕事があるわけじゃないし、生きることに精一杯になってしまう。
でもインターネットの発展により「自分に価値をつける方法」っていうのがどんどん出てきました。YouTubeやniconico動画の再生回数なんかもそのうちの一つですよね。

ーーたしかに、活動のフィールドはどんどん増えていますよね。

「ミュージシャンになりたいんだけど…」って言って地方でくすぶってる人は、自分に対して言い訳をしているだけなんですよ。
人間”やらないための言い訳”を作るのが巧いですからね。発表するフィールドは無限にあるんだから、それを使ってちゃんとセルフプロデュース能力を磨くっていうことを一番ちゃんとやるべきなんじゃないかなと。
役者だったりボーカリストだったり、若い連中といろんなお付き合いがあるんですけど、プロで若手の連中はみんな「事務所はなんにもしてくれない」ってよく言うのを聞くんですよ。何か悪いことがあったとき人のせいにするのは簡単なんですが、その前にまず周りの人を動かすだけの価値が自分にあるの?っていうハナシです。
「この人になにかしてあげたいな」と周りに思わせる何かを自分の中に作るっていうのは地方にいようがどこにいようが作れると思うので。

ーー確かにいろんなツールが出てきて、誰でもどんなことでも発信できますからね。

バンドマンの話だと、「ライブをすることが命」みたいな人がいまだに多いと思います。それでいつか誰かが拾ってくれるんじゃないか、みたいな。もちろんそのライブもすごく大事なんです。
でも例えば、美味しいフルーツを作ったとしてもそれを知ってもらわなくちゃ意味が無いですよね?「美味しいフルーツ」っていうのはこの世に沢山あって、その中でそれを食べてもらう理由っていうのを自分たちで生み出せない限りはみんな食べてくれないんです。
だから「今流行りの〜」とか、「糖度何%で〜」みたいな売り文句がつくわけですよ。

ーーこちら側から”理由”を提示してあげないといけないということですね。

それこそクラウドファンディングで何百万円集めました、みたいな数字があるとそこに価値を見出して声をかけてくる人が現れるかもしれません。
数字じゃない部分も当然ありますけど、分かりやすい指標としてはやはり重要ですよね。

ふわっと「〜になりたいんです」っていう人を死ぬほど見てきたけど、みんな何もしないんですよ。要は自分たちが商品であるってことを意識しないで夢だけ語ってるから、それじゃなれるはずないよねっていう。
自分や自分の作品を売るためのツールの使い方をもっと勉強するべきだと思います。

ーー厳しいお言葉ですが、確かにその通りですね。それでは最後にbambooさんのこれからの活動について教えてください。

今はOVERDRIVEから来年リリースするバンドをテーマにした物語「MUSICA!」という作品を作っているんですが、これに集中する予定です。「バンド」のエグいトコまで描くつもりで作ってますんで是非音楽関係の人にプレイしてほしいですね。

あと自分にとってのエンターテイメントってなんだろうっていうのは常に考えています。なんでも面白い方がいいじゃないですか。
誰も何もしてくれなくとも、自分で面白くない世の中を面白くしていけばいい。
ワクワクするようなものを作れなくなった時が引退かなと思っていますが、それまではまだまだ頑張ります。

ーーありがとうございました。

いかがでしたでしょうか?OVERDRIVEでは現在新作ゲーム「MUSICA!」の体験版を配布中とのこと。こちらもぜひチェックしていただければと思います。

MUSICA!特設サイト

読者プレゼント

今回bambooさんのご好意で、読者プレゼントをご用意致しました!

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応募期間は7/10(火)〜7/16(月)となっており、当選した方にはDMにてご連絡させていただきます。

こちらのキャンペーンは終了いたしました。
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取材・執筆:momo (田之上護/Tanoue Mamoru)

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profile:1995年生まれ。Digital Performer・Ableton liveユーザー。音楽学校を卒業後作曲家として福岡から上京。
2017年8月ツキクラ「STARDUST」に作・編曲で参加し作家デビュー。
「心に刺さる歌」をモットーに、作詞作曲・編曲からレコーディングまで全てをこなすマルチプレーヤー。
アートユニット「Shiro」の作編曲担当としても活動中。

ホームページ:Music Designer momo
TwitterID :@momo_tanoue