Sonnox Oxford Dynamic EQ 特徴と使い方

Author: sleepfreaks

ダイナミックEQとは?

今回はSonnox社の「Oxford Dynamic EQ」という製品について解説していきます。
Oxford Dynamic EQは、PCのみで動作するネイティブプラグインと、UAD用のプラグインとして販売されています。

dynamic_eq

解説に入る前に、まずダイナミックEQとは何か、ということに触れておきます。
通常のEQは、ある帯域をブーストしたりカットした場合、対象のトラックに対して常にその影響が与えられます。一方で、サウンドは常に変化しており、一定の状態にあることはありません
ある部分ではEQ効果を得たい、他の部分ではEQ効果が欲しくない、という場合もあるでしょう。

その際オートメーションを使うという方法もありますが、頻繁な変化に対してオートメーションを書くのは効率的ではありません。
そこで、帯域ごとのダイナミクスを基準として、EQの効き具合を変化させることができるのが、ダイナミックEQです。

Sonnox Oxford Dynamic EQ 動画


EQの設定

それではOxford Dynamic EQの機能について見ていきましょう。
Oxford Dynamic EQは、見た目も通常のEQと似ていて、直感的に操作することができます。

eq_setting

  • ①各バンドのマーカーを動かすことで、Targetゲインと周波数を設定します
  • ②△マークを上下させることでOffsetゲインを設定します(左右で周波数も設定可能)
  • ③上下ドラッグでQ(帯域の幅)を設定します
  • ④対象のチャンネルをStereo/Left/Right/Mid/Sideから選択します
  • ⑤カーブの種別をHigh Shelf/Bell/Low Shelfから選択します
  • ⑥EQマーク(EQ Enable)で目的のバンドのオン/オフ、ヘッドフォンマーク(EQ Listen)で目的のバンドのみモニター

Targetゲインとは、ダイナミクスに応じてEQをかける際のゲインの最大(最小)値です。
一方、Offsetゲインとは、ダイナミクスに関係なくEQをかけておく値で、通常のEQのように常にその効果が与えられます。
つまり、TargetゲインとOffsetゲインの差の分だけ、EQ値が変化するということになります。

ダイナミクスの設定

ここからは実際にトラックに適用することを想定して解説していきます。

このようなドラムセット全体の音を収録したループ素材やステムなどで、その中かから「選択的にスネアだけにEQをかけたい」といった際にダイナミックEQは便利です。

まず、スネアに効く帯域を探しましょう。Offsetゲインで探した方がわかりすいです。

snare_freq

帯域に当たりがつけられたら、Offsetゲインを0に戻し、Targetゲインを上げましょう。

target

このように白い線が上下し、EQの効き方が変化しているのがわかります。
今の状態だとサウンドにあまり変化を感じられないので、ダイナミクスのパラメーターを調整していきましょう。

Threshold

Thresholdを下げると、より効きが強くなりますが、スネア以外のタイミングでも大きく反応してしまいます。
ここで次に調整したいのが、Attackです。

attack

Attackを適切に早めることにより、適切にスネアに反応させることができます。ダイナミクスの効き自体も強くなるので、併せてThresholdも調整しましょう。

そして、Dynamicsで最終的な反応の強さを調整します。

Dynamics

これで可能な限りスネアだけに強く反応させることができます。

最後はReleaseで余韻のコントロールを行います。

Release

Releseは遅くするとスネアの余韻まで持ち上がりますが、他のドラムサウンドへの影響も大きくなるので注意します。
設定が終わったらEQ Enableボタンを消灯/点灯させ、オリジナルの時と比べてみましょう。

今回は以下のようなサウンドになりました。前掲のオリジナルのサウンドと比べてみてください。

サイドチェインの活用

上記ループサンプルを使って、もう一つ例を示します。
ドラムの中でキックに対して選択的にEQをかけるとしましょう。このように1番を使って、帯域やゲイン、ダイナミクスは適度に調整してあります。

kick_setting

ただ、この設定でダイナミクスを見てみると、どうしてもスネアのタイミングまで反応してしまっていることがわかります。
ここで使用したいのが「SC」=サイドチェインボタンです。
サイドチェインボタンを押すと、チャンネル設定やタイプ、周波数などが設定できるようになります。周波数は、下のインジケーターから操作することも可能です。

sc

ここでは、ハイパスのまま、サイドチェイン領域を50Hz以下に設定してみました。これで、その領域のダイナミクスのみに反応させることができます。

通常のEQとの比較

スネアとキックを個別に狙ってかけた結果として以下のようなサウンドになりました。ダイナミックでない通常のEQのサウンドとも比較してみてください。

通常のEQではハイハットなど他の音のイメージにも影響が出ますが、Dynamic EQの場合狙った音だけにEQ効果を与えられているのがわかります。

DetectとTriggerについて

もう2つのパラメーター「Detect」と「Trigger」については、以下のような役割があります。

detect_trigger

Detect

  • Peak:通常の設定で全体的なピーク信号レベルに反応します。
  • Onset:突発的なレベル変化のみに反応しますので、よりアタックを強調したい場合や、歯擦音をカットしたい場合などに使用します。

Trigger

  • Above:Thresholdを超えた入力があった際に、オフセットゲインからターゲットゲインに向けてEQ効果が動きます。
  • Bellow:Aboveとは逆に、Thresholdレベルを超えた時”以外”でターゲットゲインに設定され、超えた際にEQ効果が弱まるという動きをします。狙ったサウンドを選択的に抑えたり、ノイズをゲートするといった際に使用します。

カットの場合の使用例

最後にもう一つ、カットの場合の使用例を示しておきます。
以下のようなアコギのストロークのサンプルで、若干高域のピークが耳障りな箇所がある場合にも、Dynamic EQは活躍します。

通常のピークカットをする要領で、強いピークが入った際だけダイナミックに反応するよう設定してみました。

guitar

結果のサウンドはこちらです。通常のEQを使用した場合とも比較してみてください。

通常のEQではアコギ全体のサウンドが変化してしまうのに対し、Dynamic EQはピークのみを自然に抑え、サウンドのイメージを損なわない、ということがお分かりいただけたかと思います。
他にも様々な活用シーンがありそうですね。

以上、EQの緻密さとマルチバンドコンプの音楽的な効き方を併せ持つ強力なツール「Sonnox Oxford Dynamic EQ」をご紹介しました。
ご興味を持たれた方はぜひ利用してみてください。

記事の担当 大鶴 暢彦/Nobuhiko Otsuru

Sleepfreaks DTM講師 大鶴 暢彦
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