ディグリーネーム(4和音)の活用(後編)/音楽理論講座
キー変更にディグリーネーム(4和音)を活用する
前回に引き続き、4和音のディグリーネームの活用方法を学んでいきます。
こちらもまず、キーの変更についてです。
ディグリーネームを使うと、非常に簡単にキーを変更することができます。
前回から取り上げている「Fly Me to the Moon (In Other Words)」では、
ノンダイアトニックコードが出現しますが、ローマ数字部分がルート音を表しているとわかった今では、
キー変更にできるはずです。
✳︎ノンダイアトニックコードの扱いについては後の回で詳しく取り上げますが、
今回は今までの知識だけでも対応可能です。
今回は、キーを「+2」としてみましょう。
✳︎シンセのピッチなどでもよく見る表記ですが、+1で半音上、-1で半音下となります。
+12で1オクターブ上、-12で1オクターブ下、+7でP5th上です。
今回はキーですので、スケールの最初の音とともに、残りの音も同様に移動するイメージです。
さて、前回で既にディグリーネームによる分析は済んでいます。
I7やIII7はダイアトニックコードにはありませんが、
Key=Cの場合、C=I、E=IIIですので、その隣にコードの性質を書き、「I7」「III7」と表記できました。
あとは、Key=Dメジャーですので、ローマ数字部分にDメジャースケールの音を入れるだけです。
上記を踏まえ、Key=Dメジャーの「Fly Me to the Moon」前半部分の進行は、以下のようになります。
このように、まだやっていないテクニック(ノンダイアトニックコードの使用)が出てきても、
今までの知識である程度は対応できますね。
楽曲分析や転調の練習をされる際は、ひとまずダイアトニック/ノンダイアトニックに囚われず行ってみて下さい。
後の回でそれらの使い方が理解できるようになりますので、引き出しを増やしておいて損はないです。
3和音と4和音の組み合わせによるバリエーション
23_ディグリーネームを活用する(後編)で取り上げた「王道進行」
- IV→V→IIIm→VIm
こちらを4和音にしてみましょう。
ダイアトニックコード表とともにご確認ください。
- IVmaj7→V7→IIIm7→VIm7
また違う雰囲気ですね。
ちなみに、2つ目のコード「V7」はドミナント・セブンスコードですのでトライトーンを含んでいます。
楽曲の雰囲気やメロディーなどに対して、トライトーンの”緊張感”が気になる場合は、
3和音のVに変えて、
- IVmaj7→V→IIIm7→VIm7
などもいいですね。
さらに、最後のコードがm7だと、少しきらびやかさが出てしまうので
ここは3和音のマイナーコードにしてみるといった試みも良いでしょう。
- IVmaj7→V→IIIm7→VIm
コードだけではなく、ボイシングや、トップの音(コードの中で一番高い音)を何にするかで
いろいろな表現ができますので、ぜひ試してみてください。
さて、ここで3回ほど王道進行を繰り返した後に、ある仕掛けをした音源をお聞きください。
綺麗に楽曲が「終わった」という感じがしませんか?
色々な曲を聴いていると、その流れにストーリー性を感じることができると思います。
導入や展開があり、緊張感のある部分があり、そして”終わった”、”一段落した”
といったことを音で表現しているのです。
楽曲を分析する際には、まずこの様な「ストーリー性」を意識してみて下さい。
次回以降、そこに理論的なアプローチを加えていきます。
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記事の担当 伊藤 和馬/ Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。 バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
その技術を活かし、POPSから映像音楽まで、幅広い作曲活動を行っている。