ディグリーネーム(4和音)の活用とノンダイアトニックコードの存在/音楽理論講座
4和音コードも含めた実践とノンダイアトニックコードの存在
今回は4和音も交え、ディグリーネームを実践的に活用していきましょう。
ノンダイアトニックコードなど先取りの内容も出てきますが、
同じ曲で進めていきますので、感触だけでも掴んでおいて下さい。
また、前回の内容が必須になりますので、未読の方はそちらから先にご覧下さい。
4和音ディグリーネームによる楽曲の分析
まずはこちらのサンプルをお聴き下さい。
世界中の人々にカバーされ、日本でも有名な「Fly Me to the Moon (In Other Words)」の前半の一節です。
非常におしゃれなコード進行ですね。実際はもっとスウィングフィールで演奏されます。
今回は、こちらを解き明かしてみましょう。
まずはキーの把握です。
譜面がある場合、#やbの位置を見れば容易に把握できますね。
- メロディ
- コード
#も♭も付いていないキーは…
Cメジャー、もしくはAマイナーのいずれかでしたね。
ところでこの曲は、メジャーの明るい雰囲気から、
マイナーのクールで暗い感じにシフトしている感じがしませんか?
コードネームも確認してみましょう。
特に最後の3小節あたりで、暗さやマイナー感を感じますね。
ここでマイナーセブンスの回を思い出して下さい。
- マイナーコードは、突き抜けた暗い印象
- マイナーセブンスは、暗さの中にも煌びやかさがある複雑な響き
という例を挙げたと思います。
今回の曲では、最後のコードをAmに置き換えてみると分かりやすいかもしれません。
- 最後がAm
- 最後がAm7(オリジナル)
他の曲を聴く際や、ご自身で作曲する際にも、ぜひこの微妙な違いを意識してみて下さい。
キーのスケールにはない「♯」や「♭」の扱い
譜面がない場合は、耳コピを行ってメロディーやコードからキーを読み取っていきます。
- メロディ
- コード
ここで改めて気付くと思いますが、Cメジャースケールの音が中心なのになぜかG#がありますね。
また、C7のコードにはB♭が含まれています。
そして、Key=Cメジャーのダイアトニックコードには…
C7、E7なんてコードは見当たりません。
同様に、これまでの学習を踏まえて自分の好きな曲で解析を試みたところ、
ダイアトニックコードにないコードが出てきて、苦戦したという方もいらっしゃると思います。
ここで分かる事は、世の中の多くの曲では
「ダイアトニックコード以外のコード」=「ノンダイアトニックコード」も使用されているということです。
✳︎もちろん『ダイアトニックコード』のみで作られている素晴らしい曲もたくさんあります。
ノンダイアトニックコードの使い方についてはもう少し先で取り上げますので、
ここでは、上記の進行をどう分析するかについてだけ押さえておきましょう。
3和音の時と同様の手順で、表を見ながらディグリーネームに置き換えていきます。
「?」とつく部分以外は今までの要領で分析できました。
では「?」(ノンダイアトニックコード)はどう扱うのでしょうか。
考え方はいたってシンプルです。
21回目でご紹介したように、ディグリーネームの各ローマ数字は、スケールに対応しています。
それを応用し、たとえダイアトニックコードにはなくても、
「スケールの何番目か?」でローマ数字に置き換えてしまいましょう。
今回はKey=Cメジャーなので、C7はI7、E7はIII7ということになります。
これで分析が出来ました。
キーが変わったように聴こえる謎
Fly Me to the Moonの最後の暗くなる展開については、マイナーのダイアトニックコードや、
各コードの機能(ファンクション)を学ぶことで、別の見方ができるようになります。
その説明の際もこの楽曲を使用しますので、頭の片隅に入れておいてください。
次回は引き続き、4和音コードも交えた楽曲のキー変更やコード進行の例を取り上げていきます。
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記事の担当 伊藤 和馬/ Kazuma Itoh
18歳で渡米し、奨学金オーディションに合格後、ボストンのバークリー音楽大学で4年間作曲編曲を学ぶ。 バークリー音楽大学、現代音楽作曲学部、音楽大学課程を修了。
その技術を活かし、POPSから映像音楽まで、幅広い作曲活動を行っている。